
健康のために食生活を変えようと努力したけど、結局長続きせずいつもの食事に戻ってしまう人は多くいます。無理なく健康的な食生活を送るための第一歩としておすすめの食材は「全粒粉」です。全粒粉を使ったパンやパスタを日々の食事に取り入れるだけで、手軽に食生活の改善が可能です。
この記事では全粒粉の特徴や選び方について詳しく解説します。記事を読めば全粒粉を上手に活用する方法がわかり、忙しい毎日の中でも無理なく健康的な食生活を始められます。全粒粉は血糖値の抑制や腸内環境の改善に効果的です。日々の食事に全粒粉を取り入れて、健康的な食生活を手に入れましょう。
全粒粉とは小麦の粒をまるごと挽いて粉にしたもの

全粒粉とは小麦の粒をまるごと挽いた粉のことで、パンやパスタの原料として使われます。全粒粉の特徴に関して以下の内容を解説します。
- 全粒粉の特徴:栄養価が高く香ばしい風味がある
- 全粒粉と小麦粉の違い:栄養価や風味、精製方法が異なる
全粒粉の特徴:栄養価が高く香ばしい風味がある
全粒粉の最大の特徴は栄養価の高さと穀物ならではの香ばしい風味です。全粒粉は小麦粉では取り除かれてしまう胚芽や表皮もまるごと粉にしているため、さまざまな栄養素が含まれています。香ばしい風味と食べ応えのある食感で、腹持ちが良い点も全粒粉の魅力の一つです。
全粒粉の見た目は少し茶色く、製品によってはプチプチとした食感も楽しめます。全粒粉をいつもの料理に使うだけで、手軽に栄養と満足感をプラスできます。
全粒粉と小麦粉の違い:栄養価や風味、精製方法が異なる
全粒粉と小麦粉の大きな違いは「精製方法」にあります。全粒粉は栄養が豊富な胚芽や表皮まで、小麦の粒をまるごと挽いて作られます。胚芽や表皮を取り除き、中心の胚乳だけを挽いたものが小麦粉です。原料となる小麦をどこまで使うかによって栄養価や風味、料理の仕上がりが変わります。
全粒粉は小麦粉に比べて栄養価が高いことが特徴です。全粒粉をパンやお菓子に使うと、独特の香ばしさと食べ応えのある食感を楽しめます。
全粒粉に含まれる5つの栄養素

全粒粉に含まれる代表的な栄養素は以下のとおりです。
- 食物繊維
- カリウム
- マグネシウム
- 鉄分
- 亜鉛
食物繊維
全粒粉には一般的な小麦粉の約4倍の食物繊維が含まれています。食物繊維にはお腹の調子を整えたり、体の内側から健康をサポートしたりする役割があります。食物繊維の効果は以下のとおりです。
- お腹の動きを助けてお通じを良くする
- 腸内環境を整える
- 糖の吸収を抑えて血糖値の急上昇を防ぐ
- 満腹感を長持ちさせる
全粒粉で食物繊維を摂取すれば、健康的な体づくりをサポートしてくれます。
カリウム

全粒粉には小麦の表皮や胚芽に含まれるカリウムが豊富に残っています。カリウムは体の中の余分な塩分を外に出してくれる栄養素です。カリウムには体内の水分バランスを整える働きがあり、高血圧の予防や改善、むくみ解消などの効果が期待できます。
普段の食事で手軽にカリウムを摂取したい人は小麦粉を全粒粉に変えるだけでも効果的です。
マグネシウム
全粒粉にはマグネシウムが豊富に含まれており、筋肉や神経の機能維持を助ける効果があります。マグネシウムは体内で300種類以上の酵素の働きを助ける補酵素として機能するミネラルです。精神を安定させる働きがあることから、マグネシウムは「抗ストレスミネラル」とも呼ばれています。
筋肉の動きを正常に保つこともマグネシウムの役割の一つです。骨の健康を維持するうえでも重要な栄養素であり、マグネシウムが不足すると骨粗しょう症などの不調につながる恐れもあります。
鉄分

全粒粉には一般的な小麦粉の約3倍もの鉄分が含まれています。鉄分は全身に酸素を運ぶ役割を担っている栄養素です。鉄分が不足すると体に酸素が行き渡らなくなり、以下の体調不良の原因になる場合があります。
- 疲労感やだるさ
- めまいや立ちくらみ
- 息切れ
いつもの主食を全粒粉パンやパスタに置き換えるだけで、手軽に鉄分を摂取できます。女性は月経で鉄分を失いやすいため、意識的に摂取することが推奨されています。
亜鉛
全粒粉は亜鉛が多く含まれる胚芽やふすま部分もまるごと粉にしています。亜鉛は美容と健康を維持するために欠かせない栄養素です。
亜鉛には体の中で新しい細胞を作ったり、免疫機能を正常に保ったりする働きがあります。亜鉛の主な役割は以下のとおりです。
- 皮膚や髪の毛の健康を保つ
- 体調を崩しにくい丈夫な体づくりをサポートする
- 味覚を正常に保って食事をおいしく楽しめるようにする
全粒粉を食生活に加えると亜鉛を効率良く摂取できるため、病気に負けない健康的な体づくりにつながります。
全粒粉のメリット3選

全粒粉のメリットは以下の3つです。
- 糖質を抑えられる
- 血糖値の急上昇を防げる
- 腸内環境を改善できる
糖質を抑えられる
全粒粉をいつもの小麦粉と置き換えるだけで糖質を手軽に抑えられます。一般的な小麦粉と比較して、全粒粉は同量当たりの糖質量が少ないからです。全粒粉に含まれる胚芽や表皮には食物繊維やビタミンが多く、糖質のもとになるでんぷんは小麦粉より少ないことも特徴です。
100g当たりで比較すると強力粉の糖質量は約69g、全粒粉の糖質量は約57gと10g以上もカットされています。普段食べているパンやパスタを全粒粉で作ったものに変えるだけで、手軽に糖質制限が可能です。
血糖値の急上昇を防げる

全粒粉は食後の血糖値の上昇度合いを示すGI値が低い「低GI食品」です。全粒粉に含まれる食物繊維が糖の吸収を穏やかにするため、血糖値の急上昇を抑える効果が期待できます。
血糖値の急上昇は「血糖値スパイク」とも呼ばれており、食後に眠くなったりだるさを感じたりする原因の一つです。血糖値スパイクには体に脂肪を溜め込みやすくするリスクもあります。日々の食事に全粒粉を取り入れるだけで、血糖値スパイクを防ぎつつ血糖値を安定させられます。
腸内環境を改善できる
全粒粉に含まれる豊富な食物繊維によって、腸内環境を整える効果が期待できます。食物繊維を摂取するとお腹の中の善玉菌の量が増えるため、悪い菌の活動が抑えられ腸内環境のバランスが整います。食物繊維には便のカサを増やして腸を刺激する働きもあるため、お通じの悩みも解消可能です。
腸内環境を改善すると体の免疫機能を強化することにもつながります。日々の食事に全粒粉を取り入れることで、腸の中から健康を維持しやすくなります。
全粒粉の選び方

自分に合う全粒粉の選び方は以下のとおりです。
- 作る料理に合わせて選ぶ
- 生産地で選ぶ
- 製粉方法で選ぶ
作る料理に合わせて選ぶ
全粒粉にも小麦粉と同じようにさまざまな種類があるため、作りたい料理に合わせて適したものを選ぶ必要があります。パンやピザなどもちもちとした食感の料理には、グルテンが豊富な強力粉タイプの全粒粉がおすすめです。クッキーなどのサクッとした食感のお菓子にはグルテンが少ない薄力粉タイプの全粒粉を使いましょう。
うどんやパンケーキなど幅広い料理に活用したい場合は中力粉タイプの全粒粉が適しています。初めて使う人や手軽さを重視する人は小麦粉とあらかじめ混ざっている全粒粉がおすすめです。状況に合った全粒粉を使いこなせば、料理の幅が大きく広がります。
生産地で選ぶ

全粒粉は生産地によって風味や食感が大きく異なるので、安全性や作りたい料理に合わせて選ぶことをおすすめします。国ごとに栽培されている小麦の種類や気候の違いが、全粒粉の個性となって現れます。全粒粉の生産地と特徴は以下のとおりです。
- 国産(主に北海道産)
- 国産の全粒粉はポストハーベスト農薬(※)の心配がなく、安全性を重視する人に最適です。国産の全粒粉は豊かな風味でもっちりとした食感に仕上がります。
- アメリカ・カナダ産
- アメリカ・カナダ産の全粒粉はタンパク質の量が多く、パンやピザ作りに向いています。ふっくらと力強く膨らむため、アメリカ・カナダ産の全粒粉はボリュームを出したい料理におすすめです。
- オーストラリア産
- オーストラリア産の全粒粉はクッキーやスコーンなどのお菓子作りに適しています。サクッとした軽い食感に仕上がる点がオーストラリア産の全粒粉の特徴です。
- フランス産
- フランス産の全粒粉は独特の香ばしい風味を楽しめます。フランス産の全粒粉をハード系のパンやタルト生地に使うと本格的な味わいになります。
- オーガニック(有機JAS認証)
- オーガニックの全粒粉は農薬や化学肥料を避けたい場合に最適です。オーガニックの全粒粉は健康を意識する人に選ばれています。
※ ポストハーベスト農薬とは、輸送・保存中のカビや腐敗を防ぐ目的で収穫後の農産物に使われる殺菌剤や防かび剤のことです。
それぞれの生産地の特徴を知れば、作りたい料理やこだわりに合った全粒粉が見つかります。
» オーガニック食品とは?特徴や魅力も詳しく解説
製粉方法で選ぶ
製粉方法によって風味や使いやすさが異なるため、全粒粉は作りたい料理や好みに合わせて選ぶ必要があります。全粒粉は挽き方によって熱の加わり方や粉の粒の大きさが変わり、それぞれに特徴が生まれるからです。全粒粉の製粉方法には「石臼挽き」と「ロール挽き」の2つがあります。
石臼挽きは石の臼でゆっくり丁寧に小麦を挽く製粉方法です。石臼挽きは熱が発生しにくいので、小麦本来の豊かな風味や栄養が残りやすくなります。パンやお菓子の香ばしさにこだわりたい場合には石臼挽きで作った全粒粉がおすすめです。
ロール挽きは機械のローラーで小麦を挽く製粉方法です。ロール挽きの全粒粉は粉の粒の大きさがそろってサラサラしているため、小麦粉と同じ感覚で使えます。ロール挽きは初めて全粒粉を試す際に便利な製粉方法です。
風味を重視するなら石臼挽き、手軽さを求めるならロール挽きなどの目的に合わせて全粒粉の製粉方法を選びましょう。
全粒粉を使ったおすすめレシピ3選

全粒粉を使ったおすすめのレシピは以下のとおりです。
- 全粒粉パンのレシピ
- 全粒粉パスタのレシピ
- 全粒粉スコーンのレシピ
全粒粉パンのレシピ
全粒粉パンを手ごねで作る場合、全粒粉の割合を強力粉に対して30~50%程度にするとふんわりとした食感になります。全粒粉の割合を100%にすると、ずっしりとした食感と豊かな風味を味わうことが可能です。
くるみやレーズン、チーズを全粒粉パンの生地に混ぜ込むと栄養価も満足度も向上します。忙しい人はこねずに混ぜるだけのレシピや夜に生地を準備して冷蔵庫でゆっくり発酵させるオーバーナイト法が最適です。
全粒粉パスタのレシピ

全粒粉パスタの香ばしい風味を生かすなら「ツナとキノコのトマトソースパスタ」がおすすめです。ツナとキノコのトマトソースパスタは忙しい日でも15分ほどで手軽に作れます。ツナとキノコのトマトソースパスタに必要な食材は以下のとおりです。
- 全粒粉パスタ
- ツナ缶
- お好みのきのこ
- カットトマト缶
- ニンニク
- オリーブオイル
ツナとキノコのトマトソースパスタの作り方は以下のとおりです。
- オリーブオイルでニンニクときのこを炒める
- トマト缶とツナを加えて煮詰める
- 茹で上がった全粒粉パスタとソースを和える
お好みでほうれん草やブロッコリーを足すと手軽に野菜も摂取できて栄養バランスが向上します。
全粒粉スコーンのレシピ
全粒粉を使えば栄養がたっぷり詰まったスコーンを簡単に作れます。全粒粉スコーンは材料を混ぜて焼くだけなので、お菓子作りが初めての人や忙しい日のおやつにもぴったりです。全粒粉スコーン(約6個分)の材料は以下のとおりです。
- 全粒粉:50g
- 薄力粉:50g
- ベーキングパウダー:小さじ1
- きび砂糖:大さじ1
- 塩:ひとつまみ
- 冷たいバター:30g
- 牛乳(または豆乳):50ml
全粒粉スコーンの作り方は以下のとおりです。
- ボウルに粉類を入れて混ぜる
- 1cm角に切った冷たいバターを加えて指ですり潰すように混ぜる
- 牛乳を加えてゴムベラで切るようにさっくりと混ぜ合わせる
- 生地を2cmほどの厚さに伸ばして包丁で6等分に切り分ける
- 180℃に予熱したオーブンで表面に焼き色がつくまで15〜20分焼く
全粒粉スコーンの生地はこねすぎないようにすることがポイントです。チョコチップやナッツ、ドライフルーツを加えるとおいしいおやつになります。砂糖の代わりにチーズやハーブを入れれば、食事系の全粒粉スコーンとしても楽しめます。
全粒粉を活用して健康的な食生活を手に入れよう

全粒粉は食物繊維やミネラルを豊富に含む栄養価の高い食材です。全粒粉には血糖値の上昇を防いで腸内環境を整える効果が期待できます。日々の食事に全粒粉を少量加えるだけで、忙しい生活でも簡単に健康的な食生活を実現できます。
すべての食事を全粒粉にする必要はありません。週に数回、主食や料理の一部を全粒粉に置き換えてみてください。少しずつ取り入れることで全粒粉独特の風味や食感にも慣れやすく、無理なく継続できます。全粒粉を活用して健康的な食生活を手に入れましょう。
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