忙しい日々の中で、買い物の時間を確保するのは大変です。商品の安全性や質にこだわりたくても、どこで購入すればいいか迷っている人は多いです。この記事では、生協(生活協同組合)について、仕組みや利用方法、メリット・デメリットなどを詳しく解説します。
生協を利用して、便利で安心な買い物をし、地域社会の発展にも貢献しましょう。
生協とは消費者が自発的に組織する非営利団体
生協は、消費者が自ら組織し運営する非営利の協同組合です。組合員の生活向上を目的とし、民主的な運営方法を採用しています。生協について、以下の3つを解説します。
- 生協の歴史
- 生協に関する法令と制度
- 生協と他の小売業の違い
生協の歴史
生協は、1844年にイギリスで世界初の生協「ロッチデール公正先駆者組合」が設立されたことによりはじまりました。生協の歴史は下記のとおりです。
- 1879年:日本初の生協「共立商社」が設立
- 1921年:大学生協の先駆けとなる「東京学生消費組合」が設立
- 1948年:日本生活協同組合連合会(日本生協連)が設立
- 1960~70年代:地域生協が急速に発展
- 1980年代:宅配事業が本格化
- 2000年代以降:環境保護や地域貢献活動を強化
- 2007年:生協法改正により利用の範囲が拡大
- 2010年代以降:インターネット注文システムの導入を促進
現在、日本全国には約600の生協が存在し、組合員数は約2,900万人に達しています。生協は日本の消費者生活に、大きな影響を与えていることがわかります。生協は時代とともに変化するニーズに応じて、サービスや活動内容を拡大してきました。
生協に関する法令と制度
生協は、消費者生活協同組合法によって規定され、設立や運営が行われています。組合員の利益を守り、適切な運営が行われるよう、さまざまな規制や制度があります。法令と制度の主な内容は下記のとおりです。
- 都道府県知事の認可が必要
- 非営利法人だと優遇
- 組合員以外が利用できる範囲は20%以内
- 事業内容は組合員に関係する範囲に限定
- 事業報告書の提出義務あり
- 議決権と選挙権は1人1票制で平等
生協と他の小売業の違い
一般的な小売業の目的が利益の追求なのに対し、組合員の利益が最優先なのが、生協の大きな特徴です。その他の生協の特徴としては、下記のものがあります。
- 組合員による民主的な運営
- 地域密着型サービスの提供
- 利益は配当や事業への再投資で還元
- 組合員の要望を重視した商品選定
- 独自の共同購入システム
- 福祉サービスなど小売以外の事業も展開
- 利益ではなく適正価格を重視した価格設定
- 地域の特性に合わせたサービス展開
- 生産者との直接的な関係構築
上記の特徴により、生協は組合員のニーズに沿ったサービスを提供し、消費者志向のビジネスモデルとして注目を集めています。
生協の仕組み
生協の仕組みの基本は、組合員による自主的な運営と参加です。生協の仕組みについて、下記を解説します。
- 出資
- 利用
- 運営
出資
生協の組合員は一定額の出資金を拠出します。出資は生協の財政基盤を支える重要な要素です。生協の運営には、組合員の出資が欠かせません。出資金の額は生協によって異なりますが、一般的に1口500円や1,000円と設定しているところが多いです。出資金は、生協の事業資金や設備投資に使われます。
出資の特徴は、下記のとおりです。
- 脱退時に返金される
- 1人1票の議決権がある
- 追加で出資できる
多くの組合員が出資することで、生協の財政基盤が強化され、より良いサービスや商品の提供につながります。出資は単なる資金提供ではなく、組合員が主体的に生協の運営に参加する意思表示でもあります。生協の理念に賛同し発展に寄与したい人にとって、出資は重要な関わり方の一つです。
利用
生協では、組合員のニーズに合わせてさまざまな利用方法を選べます。主な利用方法は、注文した商品を自宅や指定の場所に届けてもらう配達サービスです。忙しい共働き夫婦や高齢者におすすめです。注文方法は、インターネットや電話、カタログなど組合員の生活スタイルに合わせて選べます。
店舗での直接購入も可能なため、一人暮らしの人や急に必要になった商品がある場合でも便利です。配達は毎週決まった曜日に必要な商品が届くため、食事制限のある人や計画的に食事を管理したい人にも適しています。共同購入による割引や特典もあります。
組合員の要望に応じた商品開発や地域ごとの特産品、季節商品など多様なニーズに応じた商品も購入可能です。
運営
生協の運営は、組合員による民主的な意思決定が基本です。組合員の声を重視し、協力的な運営を目指しています。具体的な運営内容は、下記のとおりです。
- 総会や理事会で重要な事項を決定する
- 地域ごとに運営委員会を設置する
- 職員と組合員の協力によって運営する
- 組合員が自主的に活動グループを運営できる
- 経営情報を公開し透明性を確保している
- 組合員による監査制度により運営の健全性を確保している
- 地域の特性に合わせた運営をしている
- 環境保護や社会貢献など地域に根差した活動を展開する
生協は組合員主体の運営であり、利用者の声を反映しやすい仕組みです。
生協の事業内容
生協の事業内容は多岐にわたります。主な事業として、下記の3つを解説します。
- 食品や日用品の共同購入
- 福祉サービスの提供
- 環境や地域社会への貢献活動
食品や日用品の共同購入
食品や日用品の共同購入は、生協の主要な事業の一つです。組合員が協力して商品を購入することで、大量仕入れによる価格のメリットを得られます。個人で買うよりも商品を安く手に入れられ、定期的な注文や配達により、買いに行く手間が省けるのも便利な点です。
生協では安全性と品質にこだわり、下記のような特徴のある商品も取り扱っています。
- オーガニックや無添加商品
- 地域の特産品や伝統食品
- 環境に配慮したエコ商品
生協では、生産者との直接取引により、新鮮な食材を提供しています。季節や地域に合わせた商品展開により旬の味わいを楽しむことも可能です。試食会や商品説明会を積極的に開催し、食品開発に組合員の声を積極的に取り入れています。生協は食品ロス削減にも積極的です。
共同購入は配送効率の向上につながるため、環境負荷の軽減にも役立っています。
福祉サービスの提供
生協では地域の福祉ニーズに応えるために、高齢者や障がい者、子育て世帯など幅広い層を対象としたサービスを用意しています。生活の質の向上や社会参加の促進を目的として、下記のようなサービスを展開中です。
- デイサービスセンターや訪問介護サービスの運営
- 福祉用具のレンタルや販売
- 介護保険関連サービスの提供
- 一人暮らしや共働き世帯への家事援助
- 健康相談や医療相談、介護予防プログラムの提供
- 地域包括支援センターの運営
環境や地域社会への貢献活動
持続可能な社会の実現と地域コミュニティの発展のため、生協は環境保護や地域社会への貢献活動に積極的に取り組んでいます。生協の活動は、単なる小売業にとどまらず、地域社会の発展と環境保護において重要な役割を果たしています。生協が取り組んでいる貢献活動は、下記のとおりです。
- 環境保護活動
- 地域清掃活動
- 食品ロス削減
- 子育て・高齢者支援
- 災害時の支援
- フードバンクへの協力
- 地域の文化やスポーツイベントの支援
- 地産地消の推進
- 環境教育プログラムの提供
- 地域の農業・漁業の支援
- 障がい者支援活動
- 国際協力活動
生協(生活協同組合)が大学や学校内に入っている理由も、学生や教職員の生活を支えるための利便性や目的に基づいています。
生協を利用するメリット
生協を利用することで多くのメリットを得られます。生協を利用するメリットは以下のとおりです。
- 高品質の商品を入手できる
- 注文や配達方法の選択肢が豊富にある
- 地域密着型のサービスを受けられる
- 組合員同士で交流できる
高品質の商品を入手できる
安全性と品質管理を徹底しているため、生協を利用すると高品質の商品を入手できます。産地直送や地元の生産者との提携により新鮮な食材を入手し、添加物や農薬の使用を抑えた商品が豊富です。プライベートブランドの商品開発により、高品質で低価格な商品も実現しています。
無添加の商品が多いため、発色が悪く一見美味しそうに見えない、という声もあります。ハムのように肉の加工食品はピンク色ではなく、自然な肉の色です。しかし、そのような商品を食べたい、食べてほしいという消費者に向けた商品なのです。
生協では、組合員の声を反映した商品改良や新商品開発をしており、季節や地域性を考慮した品揃えも魅力です。アレルギー対応や特定の健康ニーズに応える商品も充実しています。環境に配慮した包装や容器の使用にも力を入れているため、環境保護に貢献したい人にもおすすめです。
公正取引や持続可能な生産方法を重視した商品選定をしているので、安心して利用できます。
注文や配達方法の選択肢が多い
生協は、注文や配達方法の選択肢が豊富なため、消費者の生活スタイルや状況に合わせた柔軟なサービスの利用が可能です。家族構成や生活リズムなどに応じて、最適な利用方法を選べば、効率的かつ快適に買い物ができます。注文や配達方法の選択肢は、下記のとおりです。
- 配達頻度:定期か個別か
- 注文方法:オンラインやカタログ、電話
- 受取場所:自宅や職場、店舗など
- 配達方法:個別配送か共同購入か
- 保存法別の配達:冷凍や冷蔵、常温など
地域密着型のサービスを受けられる
生協を利用することで、地域密着型のサービスを受けられます。生協は地域の特性やニーズに合わせたサービスを提供しているため、利用者一人ひとりに寄り添ったサポートが可能です。生協が提供しているサービスは下記のとおりです。
- 地産地消の推進
- 地域イベントへの参加・支援
- 福祉サービス
- 災害時の地域支援
- 環境保護活動
- 子育て支援
上記のサービスを通じて、生協は地域コミュニティの一員として、利用者の日々の暮らしをサポートしています。地域に根差した活動は、利用者の安心感や信頼につながり、生活の質の向上に役立ちます。
組合員同士で交流できる
生協では、さまざまな機会を通じて、組合員同士の交流が可能です。生協で用意されている交流の場は、下記のとおりです。
- イベントや交流会
- 共通の関心事を持つ人々との出会い
- 地域コミュニティの形成
- 情報交換や学習の場
上記の活動を通じて、組合員は協同組合の理念を共有する仲間を見つけられます。ボランティア活動に参加すれば、社会貢献の機会を得られます。生協の運営に関与すれば、自分の意見を反映させることも可能です。子育てや介護などの経験も共有できます。
趣味や特技を生かした活動に参加すれば、自己実現の場としての活用も可能です。生協は単なる買い物の場にとどまらず、組合員同士の交流を通じた豊かな生活を実現する場となっています。
生協を利用するデメリット
生協を利用するデメリットについて、下記を解説します。
- 注文から配達まで時間差がある
- 地域によりサービスに違いがある
- 価格が割高なことがある
» 生協宅配を始める前に知っておきたい!メリットとデメリット
注文から配達までに時間差がある
注文から配達までに時間差があるのが、生協のデメリットの一つです。多くの場合、注文締切から配達まで数日かかります。生協独自の運営方式や物流システムにより、ほとんどの地域で即日配達や当日配達ができません。急な買い物や緊急時の対応が難しく、在庫切れの商品は次回以降の配達になります。
時間差のデメリットを軽減するためにも、計画的な買い物が必要であり、商品をまとめて注文することが求められます。天候や交通事情により配達が遅れることもあるため、余裕を持った注文も大切です。注文から配達までに時間差があるからこそ、計画的な買い物ができる側面もあります。
注文日と配達日に時間があるため、同じものを次の買いも注文してしまった、ということが時々あります。常備しておきたい野菜なども、切らしたくないので多めになってしまい、余ってくることがあります。余る食材は決まってくるので、大量に消費できるストックおかずを作ります。私は人参がよく余るので、キャロットラペをたくさん作って楽しみます。一人一本は簡単に食べられます。そんなレシピがいくつかあると、余ることに過敏にならずにすみます。
家計管理や食生活の改善のためにも、時間差を利用して計画的な買い物を心がけましょう。
地域によりサービスに違いがある
生協は、地域の特性やニーズに合わせてサービスを提供しているため、地域によってサービスが大きく異なります。地域によって異なるサービス内容は、下記のとおりです。
- 商品の種類や品揃え
- 配達エリアや頻度
- 店舗型生協の有無や規模
- 福祉サービスの内容や範囲
- 組合員向けイベントの頻度や内容
都市部では配達サービスが充実している一方で、地方では店舗型生協が中心になっていることがあります。地元のニーズに合わせた取り組みをしているため、環境保護活動や地域貢献活動の重点分野も地域によって異なります。
生協を利用する際は、自分の該当地域がどのようなサービスを提供しているのか、事前に確認しておくのがおすすめです。
価格が割高なことがある
生協では、一般的な小売店と比べて、価格が割高になることがあります。高品質な商品を取り扱っていることが理由の一つです。原材料や製造過程へのこだわりにより、価格が割高になることがあります。有機野菜や特殊な商品など、一般的な小売店よりも割高になる傾向にあります。
大量仕入れによる値引きが少ない場合があるのも、価格が割高なことがある理由の一つです。少量パックや個別包装の商品は、包装コストがかさむため割高になります。特売やセールの頻度が少ないことからも、生協の価格が割高に感じられることが多いです。
生協に加入する方法
生協に加入する方法について、下記を解説します。
- 加入条件
- 組合員になるための手続き
加入条件
生協に加入するには、以下の条件を満たす必要があります。
- 活動エリア内で居住・勤務している
- 満18歳以上である
- 日本国内に住所を有している
- 個人である
- 理念・活動に賛同している
- 出資金を支払う
- 定款・規約を遵守する
生協は地域に根差した組織なので、地域に住んでいるか、働いていることが重要です。加入条件は比較的緩やかですが、生協の理念や活動に賛同することが求められます。生協は非営利の協同組合であるため、地域社会への貢献を重視しているのが大きな特徴です。
出資金は組合員としての責任を示すものであり、金額は生協によって異なります。出資金は数千円程度が一般的です。出資金は通常、脱退時には返金されます。
組合員になるための手続き
組合員になるための一般的な手続きと流れは、下記のとおりです。
- 最寄りの生協に連絡する
- 加入申込書を記入する
- 出資金を支払う
- 本人確認書類を提出する
- 加入審査を受ける
- 組合員証を受け取る
- オンラインサービスに登録する
手続きに不安がある場合は、最寄りの生協に相談しましょう。
まとめ
生協は、多様なライフスタイルに対応できる消費者の味方です。高品質な商品や便利な注文・配達システム、地域密着型のサービスなど、さまざまなメリットがあります。一方で、注文から配達までの時間差や地域によるサービスの違い、価格の割高感といったデメリットも存在します。
生協を利用する際は、自分のニーズに合っているか確認することが大切です。生協への加入は比較的簡単なので、興味のある人はぜひ検討してみてください。生協を有効活用して、日々の暮らしをより豊かなものにしましょう。
» 食材宅配サービスの選び方と種類を紹介!